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変形労働時間制とは
変形労働時間制の必要性
「36協定では」でお話した通り、労働時間は原則1日8時間、1週40時間と定められそれ以降は、残業代としれ、割増賃金を支払うこととなります。この原則を貫くと不都合な場合が多々あります。たとえば、夏は忙しいのに冬は比較的手薄になる会社があったとします。この場合、夏には残業が増え、会社としては経費が通常よりかかり、労働者にとっては、肉体的疲労が蓄積させます。冬になれば、業務が手薄になるので本来であれば、夏に備えれ、会社は経費を抑え、労働者は、疲労回復の期間に充てることが出来るはずです。
しかし、労働基準法の原則である、1日8時間、1週40時間を貫き通せば冬でも経費を抑えたり、疲労回復を図ることはできません。
そこで、変形労働時間制という制度が有ります。
変形労働時間制の種類
具体的には次のような制度が定められています。
- 1か月単位の変形労働時間制
- 1年単位の変形労働時間制
- 1週単位の変形労働時間制
いずれもその単位とする期間の中で業務の繁閑がある場合に適用することで全体の労働時間を抑制し、無用な残業を減らすことが可能です。
1年単位の変形労働時間制
ここでは、一般的に多く用いられている、1年単位の変形労働時間制をご紹介いたします。
上記の会社のように1年を通して繁閑がある場合は、忙しいときの労働時間を増やして、手薄の時(冬)の労働時間を減らすという制度を作ればかなりの残業時間を削減できるはずです。
労働時間を調整するといってもやはり、法の規制が入り、好き勝手にできるわけではありません。1年変形の場合は、1年間の労働時間(限度時間は2085時間)を繁閑の時期に合わせて調整することになりますが次の通り1日の労働時間等に限度があり、それを超した場合は、残業です。
- 1日10時間
- 1週52時間
- 連続労働日6日
- 1週48時間を超す週は連続3週以下
正直、変形労働時間制は、労働時間の短縮にはかなり有効ですが、導入には専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
36協定とは
残業は、違法?
そもそも労働基準法では、労働時間は、原則、1日8時間、1週40時間を限度として定めています。この原則の除外事項として、時間外、休日労働に関する協定を締結し届出する事。非常災害時等。があります。すなわち時間外、休日労働に関する協定を締結せず、(締結していても届出をしていない場合も含む)通常業務内で残業をさせ、1日8時間、1週40時間を超えて労働させた場合には労働基準法違反が成立し、「6か月以下の懲役または、30万円以下の罰金」になってしまいます。
非常災害時というのは、そのままで、地震等の災害があったときです。
問題は、時間外、休日労働に関する協定ですが、この協定に関する事が定めてあるのが、労働基準法第36条です。労働基準法36条に定めてある協定という事で通称36協定といいます。
36協定締結の手順
では、36協定を締結するにはどのような手順になるかご説明いたします。
まず、会社で残業が必要となる具体的な内容を定め、どの位の残業が必要か考えます。36協定の届け出様式があるのでそれを準備すれば考えやすいと思います。
但し、36協定を締結すれば無制限に残業をさせることが出来るという事ではなく、36協定を締結してもなお、これ以上は残業させることが出来ないという限度時間が定められています。(原則)
残業が必要となる具体的内容、対象者、残業をさせる時間、有効期限を定めたら、労働者の過半数代表者(労働組合がある場合は労働組合)と協議の上、本協定を締結します。
協定締結後は、管轄の労働基準監督署へ提出することにより、残業を行わせることが可能になります。
社員が明日で辞めると言ってきた
一般的な退職規程
退職の規定では一般的にこのようになっているのが多いのではないでしょうか?
- 第00条 自己都合退職
社員が自己の都合で退職する場合は、少なくとも1か月前には、会社に申し出しなくてはならない。
明日、会社を辞められるか?
この規定だけで判断すれば、明日で辞めるというのはできないと思いませんか?
結論から言えば、民法では、雇用契約の当事者はいつでも解約の申し出ができ、その場合は2週間経過後に雇用契約が終了すると規定されています。
また、意見の分かれるところではありますが月給者の場合は、賃金計算期間の前半での申し出の場合はその賃金計算期間の締日で雇用契約が終了するが賃金計算期間の後半であれば次の賃金計算期間の締日まで雇用することができるとされています。
実際の実情と解決案
ただ、法的には無理でも本人が来なければ引き継ぎも何もできなくて困るのは会社です。
そこで、引きつきをしなければ賃金の減額がある等記載が必要です。
また、できれば退職金規定を作り引き継ぎがなければ退職金の減額があるようにしておくのが理想です。
退職金は、小規模企業では、支給が難しいと思いますが、社員のモラルアップが見込めるので是非作ったほうが良いです。
勤務態度の悪い社員を解雇したら無効だと言われた
解雇の実情
あいつは仕事が出来ないからクビにしたい。毎月1件以上はこの手の相談が来ます。
正直、解雇は最後の手段なのでそう簡単にはできませんと回答しますが、結局、解雇になっています。
解雇しても、その本人が自分の落ち度をある程度理解しているれば労使間トラブルに発展することはないのですが、最近は、そうもいかないみたいです。
解雇によるトラブル事例
会社から解雇されたAさんは納得がいかずこの解雇は無効だと主張していました。私に相談が来たのは解雇した後で両社から話を聞こうと思ったのですがAさんは全然聞く耳を持ってくれません。
解雇が無効ということになると会社は解雇をした日から解雇無効が成立した日までの給料を支払わなくてはなりません。それだけでもかなりの損害です。結局、何とかAさんに納得してもらえる形で自己都合でも退職扱いになりました。
解雇をするために最低限必要なこと
解雇が正式に成立するには解雇の規定の中にどのような時に解雇になるか具体的に記載しておく必要があります。ここに記載していない事項では解雇することは原則できません。
もう一つ重要なことがあります。解雇までの過程を定めてそのプロセスを行ったときは書面で記録しておくことです。特に解雇をしなくても済むような処置を行ったかどうかが重要です。
- 再教育、研修会の参加
- 配置転換
- 注意勧告 等
忙しい日の当日に有給の申し出があった
有給休暇での問題
有給休暇に関することで一番『どうにかならないか』と相談を頂くのが急に休みを請求されて困っているという事例です。
この場合、会社には時季変更権といって今日は忙しいので別の日に休んでもらうという事ができます。但し、この場合は、やはり就業規則にきちんと明確にその旨を記載しておかなければトラブルになることは必至です。
ですので有給休暇の規定のところには少なくとも次の3つの規定を盛り込んでおく必要があります。
- 時季変更に関する事項
- 当日の請求は欠勤扱いをすることがある旨の事項
- 有給を請求する場合のルール
有給の問題は社員に理解を求めて!
有給休暇は、法律的に言えば前日までに請求されれば原則認める必要があると考えます。しかし、現実問題として、明日、休みたいを言われてもそれに対応するのは困難だと思います。
そこで、有給を請求するのは1週間前に請求することなど会社のルールを記載しておくべきです。記載すればokという事ではありませんが、社員に一般的なモラルがあれば休む1週間前に申し出がないと会社の運営が難しいことは理解してもらえるはずです。
また、当日の有給請求は認めなくとも構いませんが、病気や怪我などで休んでしまった場合は、例外的に有給を認めるなど柔軟な対応が望ましいとおまいます。
特別休暇を相当あとから請求された
一般的な特別休暇規程
これも特別休暇に関するトラブル事例です。
やはりこの会社も先程と同じような規定になっていました。
- 第00条 特別休暇は次の通り付与する。
- 本人の結婚式 5日
- 子の出産 3日
この規定によるトラブル事例
Aさんは平成22年8月10日(仮)に結婚式を行いその当日に結婚届出を提出しました。社長は後日Aさんに結婚した場合は5日間の特別休暇が取れるのでどこか旅行に行ってはどうかと尋ねました。その際Aさんは『今は仕事が楽しいので結構です』と返事をしたようです。
その返事に社長はうれしくなったと話をしてくれました。
約1年後Aさんより社長に『当時取れなかった特別休暇を取りたい』との申し出がありました。
当然社長は、『1年も前のことで5日も休まれては困る』とAさんに。Aさんはそんなことは言ってもとってないのだから取れせてくださいの一点張り。
結局、社長は、Aさんの特別休暇の取得を認め5日間の特別休暇を付与しました。
この事例でもやはり、社長とAさんとの間には溝ができてしました。
特別休暇がいつ取れるのかを明確にしておけばこのようなトラブルを起こさずに済んだはずです。
特別休暇を与えたら休暇の付与日数でもめた
一般的な特別休暇規定
特別休暇として、冠婚葬祭を記載してる就業規則は、良く見かけます。
休暇の付与日数に違いがありますが多くの会社は次のように記載されているのを良く見かけます。
- 第00条 特別休暇は次の通り付与する。
- 本人の結婚式 5日
- 子の出産 3日
この規定で労使双方が思う事
この規定をみて特別休暇が付与される本人は、会社の労働日が5日または3日休めると思うはずです。
しかし、社長の考えは、会社の休みがある場合は、その日を含むのもだと考えているはずです。
例 7月10日(金曜日)に子が出産した場合 会社の休みは土、日、祝
- 社員の考え
- 特別休暇が3日あるので7月10日(金)(特別休暇)11日(土)、12日(日)(会社の休み)13日(月)、14日(特別休暇)として5日間連続で休みを取れると思っている。
- 社長の考え
- 特別休暇の3日というのは3日というのは3日間休めるということで、その間に会社の休みがある場合は当然その日を含めて3日ということだと思っている。
これは、お互いの立場にたって考えてみれば理解でするはずです。
社員は1日でも多く休みたい。社長は、お祝いはしたいが1日でも早く働いてほしいこう思うはずです。
しかし、この規定では、当然両者の思いは交差し、労使間トラブルに発展しなくても今までの良好な関係に溝を作ってしまうで出来事になってしまいました。
このようなトラブルを起こさないためには特別休暇の規定に特別休暇の付与の仕方を記載しておく必要があります。
土曜日と日曜日で給料の割増率が違うと指摘された
法令の割増率
法定時間外労働 | 2割5分増し |
---|---|
休日労働 | 3割増し |
深夜労働 | 2割5分増し |
この規定はご存じの方が多いようですが法定時間外労働というのがポイントです。
法定時間外労働とは、原則1日8時間以上、1週40時間以上の労働時間を指します。
といういことは月曜日から土曜日まで労働してもらったら土曜日は2割5分増しの賃金が必要ということです。
休日労働とは
休日労働とは何か。法令では、1週で必ず1日は休日が必要と定められています。この1週1回の休日の日に労働させた場合が割増率3割5分の休日労働になります。
しかし、この会社ではこの様な規定になっていました。
- 第00条 休日
会社の休日は土、日、祝とする - 第00条 休日労働
休日に労働した場合は、3割5分増しの賃金を支払う。
もう気づかれたでしょうか?これでは、本来、2割5分増しの法定時間外労働で良いところが3割増しの休日労働だと主張されても仕方ありません。
このようなトラブルを避けるためには、休日労働の定義をしっかり記載する必要があります。
休憩時間を長くしたら残業代が増えた
もともと会社のルール
- 就業時間
- 午前8時00分~午後5時00分
- 休憩時間
- 午前12時00分~午後1時00分
なんら変わりのない規定ですが社長はみんなのことを思い次のように休憩時間を増やしました
変更後の会社のルール
- 就業時間
- 午前8時00分~午後5時00分
- 休憩時間
- 午前10時00分~午前10時15分
- 午前12時00分~午後1時00分
- 午後3時00分~午後3時00分
これもなんら変わりのない規定ですがここに落とし穴があります
なぜ、残業代が増えたのか?
残業代を計算する場合はその人の時給単価を基にします。
例 月給者) 月給÷月平均労働時間=時給単価
日給者) 日給÷所定労働時間=時給単価
休憩時間を増やすということは分母である労働時間を少なくしていまうので残業単価が上がります。
この問題を解決するには、ただ単に休憩時間を増やすのではなく、休憩時間を増やすことによって時給単価が上がらないような仕組みつくりを並行して考える必要があります。
社員代表とは
この代表者とは、労働組合(社員の過半数組織するもの)または、社員の過半数を代表するものとされています。
社員代表者は、就業規則の意見を述べるだけではなく労使協定に記名押印する当事者でもあります。
社員代表への意見を求める
就業規則を作成したら社員へ周知します。周知の仕方は、様々で、社員全員に就業規則を配布しても良いですし、休憩所等に置いておいてみんなに見てもらうのも有りです。
私は、周知の方法としては社員説明会を開くのが一番良い方法だと思っています。
話がそれましたがこの社員への周知の後(前でもOK)に社員の代表者に作った就業規則について意見を頂かなくてはなりません。
では、いったいこの代表者とは何なのかということになります。
社員代表になれる人
社員代表者になるためには次のいずれのも該当しなくてはなりません。
- 監督又は管理の地位にあるものでないこと。(役職者でないのが理想)
- 会社と労使協定をする者を決めるとして行われた投票または、挙手等の方法にとり選出された者。